患児のためのツールは,看護師と一緒に扱うことが多いのが現状です.看護師が作成するプレパレーション・ツールは,その子どもを思う心に溢れています.それは逆にその子どものためだけのツールになるということです.つまり一方通行のデザインです.これに対してツールを看護師が扱うことで看護師が気づくことができるデザイン要素を考えることが双方向の教育を考えることになるのです.
例えば,Smileや「入院患児のためのプレパレーション用絵本(グッドデザイン賞受賞)」で子どもの視点を取り入れたことで,ストレッチャーで手術室に向かう時に流れるように感じる天井や,医療者に覗き込まれることが恐怖感や不安感を増幅していることを看護師自身にも気づいてもらうことができます.看護師が患児に説明している時,同時にその感覚を共有することは,看護教育にとって重要です.チャイルドライフデザインは,感性デザイン学がベースとならなければなら ないということも理解できると思います.「小児がん食事基準の可変性に対応した携帯サイト」では,保護者がTwitterで呟けば,寛解までのレベルによって食材などの加工方法が返ってきますが,看護師・栄養士・医師などによって文言を決めることで保護者も看護師も知識を増やすことができる仕組みをデザインしているのです.